愛知県に突入。歩行距離300㎞を突破!
‐前回の記事‐
第5話~癒しと苦痛~
東海道に入ってから昔の雰囲気が残るいい街並みが増えてきた。
こうゆう町並みは歩いてるだけで楽しい。
自然と会話も弾む。
昨日柔らかい砂浜で寝たからか、気持ち的にも身体的にも回復した。
朝から快調な歩き出しだ。
今日は天気がいい。
海沿いの古い街並みを見ながら東海道を歩く。
目の前の山が現れては消え、
消えては現れる。
一日の始まりに遠くに見える山が、
気づいたら目の前にあり、
夕方には後ろにある。
そしてまた次の山が見える。
あんなに遠くの山越えられるのかよ、
と2人で話していても、
夜には越えている。
そんな一日を繰り返していた。
―当時の日記。詩人風に。
そろそろ静岡県を越える。
東西に長いから時間がかかった。
その先は愛知県だ。
名古屋に着いたら温泉に入ろうと2人で決めていた。
それを楽しみに歩く。
後一つ山を越えたら名古屋だ!
海と山の気持ちがいい道を歩く。
大通り沿いは退屈だが楽でいい。
突然歩道がなくなり、歩行者が通れなくなる道はよくある。
そんな時は脇道を探さなきゃいけない。
何度も行ったり来たりを繰り返す。
山道は楽しいが疲れる。
気が付くとだいぶ上の方まで登っていた。
下を走るのが国道1号線と東名高速道路だ。
何百㎞も歩いて来てるが、
今日は登山の一日になりそうだ。
いくつもの名も無き山を登頂しながら、
ゴールである大阪を目指した。
異彩を放つ鳥居
朝から入った山を抜けて
開けた街が見えた頃にはお昼を過ぎていた。
どこか飯が食える場所があるか探しながら、
再び国道1号線沿いを歩いていた。
すると右側の道の奥に、ちらっと鳥居が見えた。
とくに観光にも興味が無いしお腹も減っていたので、
真っ直ぐ通り過ぎた。
だが無性に気になってしまい、
ちょっとだけ見てみようと次の角を曲がり、
鳥居の方に進みだした。
その辺り一帯が森になっていた。
近づくにつれて周りが木に囲まれていき、
先ほどまでの街の雰囲気から変わっていった。
登山でベタ付いた体が涼しく癒されていった。
愛知県、熱田神宮に到着。
鳥居をくぐった瞬間、空気が一変した。
山とは違う自然の美しさがそこにはあった。
とても神秘的な場所だった。
歴代の数々の有名な殿様たちも訪れていた記録があった。あの織田信長も。
ここにある歴史の長さを感じながら、
しばらく休憩をとった。
念願の、温泉に入った。
熱田神宮を後にして、さっそく温泉を探した。
ネットで近くにいい感じの温泉が出てきたので、そこに向かうことにした。
ずっとウキウキしていた。
それまでは寒い中公園の水道で水浴びをする毎日。
そして疲れ果てて寝る野宿。
だから温泉に入ったときは天国でした。
実に10日ぶりのお湯。
温かい。
体が芯から温まった。
この旅最初で最後の温泉。最高でした。
そして旅も折り返し地点、
気が付けばすでに300㎞を歩いていた。
ゴールまで後200㎞!ついに半分を越えた。
温泉を出た時、とても体が軽く感じた。
気持ちもスッキリした。
そして今日の寝床を探して温泉を後にした。
今日は川沿いで野宿。
温泉上がりの野宿。
また少し気が重くなった。
「ベッドで寝たい。。」
つい弱音が出てしまう。
そして今日も当たり前のように空の下で眠った。